川端税理士事務所|秋葉原

少額減価償却資産の特例が40万円未満に改正!ITフリーランス・SEが知っておくべきポイントと設備投資戦略

令和8年度(2026年度)の税制改正において、中小企業者等のエンパワーメントおよび物価高騰への対応を目的とし、実務上非常に重要な改正が行われました。

個人事業主(青色申告者)や中小企業にとって馴染みの深い「少額減価償却資産の取得価額の特例」について、その上限額が従来の30万円未満から「40万円未満」へと引き上げられたのです。

特に、昨今の円安や物価高の影響でPC等のハードウェアや周辺機器の高騰に直面していたSE、エンジニア、デザイナーといったITフリーランスの皆様にとっては、今後の設備投資戦略を大きく左右する重要な改正となります。

今回は、この改正の概要と、ITフリーランスの実務における影響、および具体的な留意点について専門家の視点から解説します。

改正の背景と概要:何が変わったのか?

従来の制度では、青色申告を行う個人事業主や中小企業者が、1個または1組の取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、法定耐用年数に関わらず、取得した事業年度にその全額を必要経費(または損金)に算入できる特例(措置法第28条の2、第67条の5)が認められていました。

今回の改正では、この基準額が「40万円未満」へと緩和されました。

SEやITフリーランスにおける実務上のメリット

これまでは、例えば35万円の高性能PCを購入した場合、一括での経費化(即時償却)ができず、原則として耐用年数(パソコンの場合は4年)にわたって減価償却を行う必要がありました。そのため、利益が出た年度の即時的な節税効果としては限定的でした。

しかし今後は、39万円の資産であっても購入した年度の経費として一括計上できるため、事業の状況に合わせた柔軟な利益調整およびキャッシュフローの改善が可能になります。

SEやITフリーランスが注目すべき「40万円未満」の設備投資

「30万円」から「40万円」への10万円の枠拡大は、IT環境のスペックを妥協なく追求するエンジニアにとって非常に大きな意味を持ちます。具体的には、以下のような資産が即時償却の対象として視野に入ってきます。

ハイエンドPC・MacBook Pro(カスタマイズ仕様)

昨今の為替レート等の影響により、MacBook Proをはじめとする開発用PCは、プロ仕様(Mシリーズの上位チップ、メモリ64GB以上、大容量SSD等)にカスタマイズすると容易に30万円を超える状況が続いていました。 今回の改正により、これらの一切妥協のないハイエンドな開発環境を、購入事業年度に全額損金算入することが可能となります。

高解像度ディスプレイ・マルチディスプレイ環境

EIZO(ColorEdge)のプロフェッショナル向けモニターや、Apple Studio Displayなどの高精細ディスプレイは、30万円台前半で推移しているモデルが多くあります。これらも1個(または1組)あたり40万円未満であれば、即時償却の対象となります。

高機能エルゴノミクスチェア(高級オフィスチェア)

長時間のデスクワークにおいて健康投資として必須となる、ハーマンミラー(アーロンチェア、エンボディチェア等)のフル装備モデルや、海外製の最上位ワークチェアも、昨今の価格改定で30万円を超えてきていました。
これらのオフィス家具への投資も、今後は一括経費としての処理が容易になります。

税務実務における重要留意点

非常に使い勝手の良い特例への拡充ですが、実務上、以下の点には厳格に留意する必要があります。

税込経理と税抜経理による判定の違い

40万円未満かどうかの判定は、事業者が採用している消費税の経理方式に準拠します。税務調査等でも厳しくチェックされるポイントです。

  • 免税事業者 / 税込経理の事業者: 「税込価格」で40万円未満(399,999円まで)
  • 課税事業者で税抜経理の事業者: 「税抜価格」で40万円未満(399,999円まで = 税込439,999円まで)

【具体例】 免税事業者が「税抜38万円(税込41万8,000円)」のパソコンを購入した場合、税込で40万円を超えてしまうため、この特例は適用できず、通常の4年償却(減価償却)が必要となりますのでご注意ください。

年間合計「300万円」の総額限度額は据え置き

1個あたりの上限額は40万円に引き上げられましたが、「1事業年度における合計限度額は300万円まで」という従来の総枠ルールに変更はありません。 例えば、38万円のPCを同一年度内に9台(合計342万円)購入した場合、300万円に達する分(7台分と8台目の一部など)までしか即時償却は認められず、超過分は通常の減価償却を行う必要があります。

適切な節税と戦略的な環境投資を

今回の少額減価償却資産の特例拡充は、ITフリーランスの皆様が「生産性を高めるための妥協なき環境投資」を行う上で、強力な追い風となります。

ただし、本特例の適用を受けるためには、「青色申告書を提出する個人事業主(または中小企業者等)」であること、および確定申告書への必要事項の記載(または明細書の添付)が要件となります。白色申告では適用できません。

「今期は売上が順調なので、作業環境を一新して来期の生産性を高めたい」「適切な節税対策を講じたい」とお考えのフリーランスの方は、購入のタイミングや経理処理について、ぜひお早めにご相談ください。

それぞれの事業状況に合わせた最適なタックスプランニングをご提案いたします。

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