第2回:動物病院の人件費と社会保険の注意点

動物病院を開業すると、避けて通れないのが人件費と社会保険の問題です。
獣医師・動物看護師・受付スタッフなど、適切な給与水準や社会保険の扱いを誤ると、経営に大きな影響を与えることになります。今回は、動物病院開業時に押さえておきたい「人件費と社会保険」の注意点を整理します。
人件費の水準と比率
動物病院では、人件費は経営コストの中でも大きな割合を占めます。
- 人件費率の目安
→ 売上高の 40〜50%程度 が一般的。これを超えると経営が苦しくなる傾向があります。 - 給与水準の相場
- 獣医師(勤務医):年収400万〜600万円
- 動物看護師:年収250万〜350万円
- 受付スタッフ:年収200万〜300万円
※地域や経験年数によって変動あり
社会保険の加入義務
スタッフを雇用すると、社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(労災保険・雇用保険)の加入義務があります。
- 社会保険
- 常勤スタッフが5人以上の事業所では原則として加入義務あり(法人の場合は人数に関わらず必須)。
- 労災保険
- 1人でも従業員を雇えば必ず加入が必要。
- 雇用保険
- 週20時間以上勤務し、31日以上の雇用見込みがあれば加入。
外注獣医師を使う場合の注意点
最近は、人手不足から業務委託契約(外注獣医師)を利用するケースも増えています。
しかし、実態が「勤務」と変わらない場合、税務署や労基署から「雇用」とみなされるリスクがあります。
- 指揮命令下で働いているか
- 勤務時間が固定されているか
- 報酬が時間給に近いか
これらに当てはまる場合は「雇用契約」と判断される可能性があるため注意が必要です。
またインボイス番号の取得の有無なども関わりますので業務委託の前には必ず税理士に相談しましょう。
資金繰りへの影響
人件費は固定費として毎月発生するため、資金繰りに直結します。
- 開業時はスタッフを必要最小限でスタートし、患者数の増加に応じて増員する。
- 給与支払い用の資金繰り表を毎月確認する。
- 賞与は必ずしも必要ではなく、利益が安定してから導入する。
まとめ
動物病院経営において、人件費と社会保険は大きなウエイトを占める項目です。給与水準・人件費率・社会保険のルールを理解し、安定的に支払える体制を整えておくことが、長期的な経営安定につながります。