法人化した動物業病院で節税目的の生命保険は時代遅れ?

かつては「節税になるから法人で保険に入る」というアドバイスも一般的でしたが、現在は状況が大きく変わっています。
特に法人が加入する積立型の生命保険に対して税制が見直され、経費として認められる割合が大幅に制限されるようになりました。
「保険に入って節税!」という発想は、いまやリスクを伴うケースもあるため、安易に選ぶのは避けたいところです。
■ 院長先生に“もしも”のことがあったとき、病院はどうなる?
生命保険の本来の目的は「経営者に万が一のことがあった場合に、残されたスタッフや家族を守ること」です。
動物病院のように、院長が診療の中心を担っている場合、急な事故や病気で現場に出られなくなると、すぐに売上がゼロに近づきます。
固定費やスタッフの給料の支払いは続くため、事業を守るには数千万円単位の資金が必要になることも。
このリスクに備えてこそ、生命保険は意味を持ちます。
■ 積立型ではなく“保障重視型”で考える
最近では、「掛け捨て型」の保険で保障を厚くすることが主流になりつつあります。
「どうせ戻ってこない」と思われがちな掛け捨て型ですが、保険料が安く、必要な保障額を確保しやすいというメリットがあります。
一方、積立型は将来の資産形成も兼ねられるというメリットがありましたが、会計上の取り扱いが厳しくなり、節税にはなりにくくなりました。
保険は節税ではなくリスクマネジメントの手段
動物病院の経営は、院長一人に多くを依存する構造になりがちです。
そのため、生命保険を“誰のために、何のために”備えるのかを明確にすることが、経営者としての責任とも言えます。
節税よりも、「病院と家族を守る仕組み」として保険を見直してみてください。
実際に生命保険に加入していた会社を多く見てきた経験から
現実には、「節税になるから」と多額の生命保険に加入していた会社を何社も見てきました。
しかし、その中で本当に有効に節税として機能したケースは、全体の10%にも満たない印象です。
なぜか?
理由は単純で、資金が出ていくからです。
保険による節税とは、一時的に経費として処理できるものの、将来的には解約返戻金などで収益計上されるため、トータルではプラスマイナスゼロの取引になります。
しかも、資金は長期間拘束され、キャッシュ不足に陥る可能性もあります。
企業が安定して黒字を維持し続けるのは簡単ではなく、思わぬ資金繰り難から利回りの悪いタイミングで解約せざるを得ないケースも少なくありません。
生命保険の加入を検討する際は、こうした実例も踏まえて、節税目的だけでなく“本当に必要な保障”が確保できているかをよく見極めることが大切です。