動物病院はインボイス登録が必要?

人間の医療は消費税においては非課税とされています。
医療は人の生命にかかわるものですから消費税を課税しないという趣旨です。
とはいえ、それも無制限ではなく一定の制約として保険診療(保険証でできる診察の範囲)に限定されています。
対して、動物病院の診療は保険証が使用できませんから自由診療と呼ばれ消費税化が課税されることとなります。
動物病院を経営する獣医師の先生であれば常識だと思いますが、
2023年から始まったインボイス制度により、消費税の取り扱いがより重要になっています。
本記事では、自由診療中心の動物病院でもインボイス登録が必要かどうか、その判断基準や実務への影響を税理士がわかりやすく解説します。
目次 ▲
1. 動物病院の診療は「課税」?「非課税」?
人間の医療行為(医師による健康保険診療など)は原則として消費税非課税です。
一方、動物病院の診療は自由診療であるため、原則「課税売上」になります。
基本的にはすべて消費税が課税されます。
- 診療費 → 課税
- 予防接種・ワクチン → 課税
- ペットフードや雑貨の販売 → 課税
2. インボイス制度とは?かんたんにおさらい
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、相手方にて仕入税額控除を受けるために「インボイス(適格請求書)」が必要になる仕組みです。
2023年10月からスタートし、インボイス(適格請求書)を発行するためには「インボイス発行事業者登録」が求められます。
インボイス発行事業者登録(インボイス番号を取得)を行うのは任意ですが、取得しなければ動物病院が発行する領収書にインボイス番号を入れることができません。
ではインボイス番号を取得しておけばいいと思われるかもしれませんが、
インボイス番号を取得するとインボイス番号を取得した瞬間から消費税の納税が発生します。
例えば、今までだと法人設立後2年は消費税の免税(消費税の納税なし)で運用できていましたが、インボイス番号を取得しなければならなければ1年目から消費税の納付義務が発生することとなります。
3. 動物病院の売上はインボイスが必要?
- 売上の相手が一般の飼い主(個人) → インボイスを求められる可能性は低い
- 売上の相手が法人(保険会社、ペットフード卸、提携ホテル等) → インボイス発行が必要になる場合あり
つまり、「顧客が仕入税額控除を使いたい立場にあるかどうか」が鍵です。
インボイス番号は相手方で利用するものなので、一般の飼い主さんであれば領収書は家計簿で使うことはあっても公的なものに利用することはありませんのでインボイス番号は不要であると思います。
対して相手が事業者であれば、インボイス番号を申告等に利用しますのでインボイス発行を要求される可能性が高いです。
4. 登録すべきかどうかの判断ポイント
- 年商が1,000万円を超える場合は「課税事業者」になるためインボイス登録が基本
- 年商1,000万円以下でも登録すれば消費税は納税義務が生じる
- 【判断の軸】
- 仕入先(業者)からインボイスを求められているか?
- 今後、法人向けの事業を拡大予定か?
- 自身の仕入でインボイスを受け取っているか?
5. インボイス登録のメリット・デメリット
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
登録する | 信用性アップ / 仕入税額控除OK | 消費税の申告・納税が発生 |
登録しない | 消費税納税なし(免税事業者) | 法人などとの取引に不利になる可能性 |
6. 実務で気をつけたい点(請求書・レジ・会計処理)
- 領収書やレシートに「登録番号」の印字が必要(インボイス対応レジ推奨)
- 会計ソフトはインボイス対応のものを使う(freee・MFなど)
- インボイス登録後は、消費税申告の申告と納付が必要に
7. まとめ
動物病院であっても、「インボイスが不要」とは言い切れません。
一般の飼い主様向けであれば不要。特定の取引先がインボイス番号ないの?という質問が来るようであれば取得するといった対応になると思います。
「誰に売上を立てているのか」をよく確認して、今後の事業展開を踏まえた上での判断が大切ですね。