動物病院の税務|薬品・フードの棚卸評価と最終仕入原価法を解説

動物病院を経営されている先生方、年末の在庫確認(棚卸)はきちんと行われていますか?
薬品やフードなどの棚卸資産は、税務上の処理によっては思わぬ課税所得の増加につながることがあります。今回は、動物病院特有の棚卸資産の扱いについて、税務の視点からわかりやすく解説します。
目次 ▲
棚卸資産とは
棚卸資産とは、事業のために保有している「販売用または消耗品として使用する物品」を指します。
動物病院で該当する代表的な例としては、以下のようなものがあります。
- 処方薬・注射薬
- 動物用サプリメント
- ペットフード(療法食を含む)
- 衛生用品(手袋、消毒液、ガーゼなど)
これらは、使用・販売した時点で経費になりますが、使用していない在庫分は期末時点で資産として計上する必要があります。
棚卸をしないと何が起きるか
「仕入れた=すべて経費」ではありません。
棚卸を実施せず、残った在庫をそのまま経費として処理してしまうと、実態と異なる損益計算となり、税務調査で修正を求められる可能性があります。
動物病院では、薬品やフードなど棚卸資産が必ず発生します。
棚卸が行われていなければ、税務調査ではほぼ確実に指摘対象となり、追加の納税が発生します。
また、金融機関の評価においても「棚卸資産が計上されていない=帳簿の信頼性が低い」と見なされるリスクがあります。
棚卸資産の評価方法:「最終仕入原価法」とは?
在庫評価の方法にはいくつか種類がありますが、特に届出をしていない場合、税務上は「最終仕入原価法」が適用されます。
これは、期末に残っている商品の単価を、最後に仕入れたときの価格で評価するという方法です。
例:
- 1月に同じ薬品を3回仕入れ
- 1回目:900円
- 2回目:950円
- 3回目:1,000円(最終仕入) - 期末に20個残っていた場合 → 20個 × 1,000円 = 20,000円が在庫評価額
このように、直近の仕入単価で在庫を評価するため、仕入価格が上昇している時期には課税所得が増加することになります。
評価方法を変更したい場合は届出が必要
「移動平均法」や「総平均法」など、他の評価方法を採用したい場合は、所轄税務署へ「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
- 届出なし → 自動的に「最終仕入原価法」
- 届出あり → 指定した評価方法が適用
なお、棚卸資産の管理においては、消費期限の管理から自然と先入先出法(先に仕入れたものから使用・販売)が実態に合っている場合も多くあります。
しかし、先入先出法を採用する場合は、在庫ごとの仕入価格を管理し、継続的に記録を残す必要があるため、小規模な動物病院では実務的な負担が大きくなる傾向があります。この点は、顧問税理士と相談して決定するのが望ましいでしょう。
棚卸を正しく行うためのチェックリスト
- 在庫数の実地確認(数え間違いや滅失がないか)
- 最終仕入価格の確認(どのロットかを明確に)
- 使用目的別に仕分け(自家使用・スタッフ提供分などが混在していないか)
- 棚卸リストの保存(税務調査時に提示できるように)
まとめ
動物病院の経営において、棚卸資産の評価は見落とされがちなポイントですが、税務調査では高確率でチェック対象となります。
特に薬品やフードなど単価が高く、在庫として残りやすい品目を多く扱う場合、評価方法や棚卸の精度がそのまま課税所得に直結します。
正しい棚卸を継続することで、
- 不必要な追徴課税の回避
- 税務調査時のリスク軽減
- 金融機関への信頼性向上
といった効果が得られます。
経営・財務・税務を健全に保つためにも、今一度、棚卸の仕組みや評価方法を見直してみましょう。
動物病院専門の税理士がサポートします
当事務所では、動物病院顧問実績をもとに業種特有の経理・在庫・棚卸のアドバイスを行っています。
「うちの在庫評価、このままで大丈夫?」
「税務調査が来ても問題ないように備えたい」
そうお考えの方は、お気軽にご相談ください。
開業医の先生へ分かりやすい言葉で、実務に即したアドバイスをいたします。