院長先生の講演・原稿・他院勤務…「診療以外の収入」の課税関係まとめ【動物病院の税務】

動物病院の院長先生は、本業の診療以外にもさまざまな分野で活躍されている方が多くいらっしゃいます。
- 学会やセミナーでの講演
- 専門誌への原稿執筆や連載
- 他院での診療サポート
- 獣医師会の役職や業務委託
- 行政関連の委嘱(狂犬病、災害時対応)
- ペットフードメーカー等からの謝礼や協力費
- 書籍出版の印税
これらの“診療以外の収入”について、どのように課税されるのか?申告は必要か?──今回は税務の視点で丁寧に解説します。
よくあるご相談
- 「セミナーで話した謝礼は雑所得?」
- 「他の動物病院で診療した収入はどう扱うの?」
- 「印税も事業収入になる?」
- 「ペットメーカーからの謝礼は?」
これらはすべて収入の“種類”によって所得区分が異なります。申告の際に間違えないように整理しておくことが大切です。
目次 ▲
所得区分ごとの代表例と税務上の扱い
活動内容 | 所得区分 | 源泉徴収 | 備考 |
---|---|---|---|
セミナー講演・講師料 | 雑所得 or 事業所得 | あり or なし | 継続性・営利性があれば事業所得扱いも |
原稿執筆・連載報酬 | 雑所得 or 事業所得 | あり | 印税は分離課税となる場合も |
他院での診療サポート | 給与所得 or 事業所得 | あり | 雇用関係の有無で判断 |
獣医師会の役員手当 | 雑所得 | あり | 支払調書が出ることが多い |
狂犬病予防業務 | 事業所得 | なし | 自院での診療報酬に含める |
行政からの災害協力金 | 雑所得 | あり or なし | 書類の内容次第で変わる |
製薬・フード会社からの協力費 | 雑所得 | あり | 試供品協力や座談会謝礼など |
書籍の印税 | 雑所得 or 事業所得 | あり | 継続的出版なら事業所得も可能 |
所得区分の判断ポイント
雑所得とは?
副業的、単発的な収入に多い区分で、原則として経費控除が可能です。源泉徴収される場合もあります。
事業所得とは?
営利性・継続性・自己責任で遂行される場合に該当し、青色申告や専従者給与など優遇制度の対象になります。
給与所得とは?
他院での勤務が「雇用契約」によるものである場合。給与明細や源泉徴収票が発行されるのが特徴です。
よくある課税判断の実例
- 月1回、セミナーで講演 → 雑所得(継続すれば事業所得も)
- 獣医専門誌に連載を持ち、毎月報酬 → 事業所得
- 週1回、知人の動物病院で診療 → 雇用なら給与所得/委託なら事業所得
- 学会理事として年数回の会議出席手当 → 雑所得
- 狂犬病予防接種(保健所からの業務) → 自院の売上として事業所得
- メーカーのセミナーでの講演料・謝礼 → 雑所得
- 書籍出版による印税収入 → 雑所得 or 事業所得(出版契約書による)
💡 申告漏れになりがちなケース
- メーカーからの「振込」や「クオカード」などの謝礼
- 支払調書が来ない報酬(原稿料や講演料の中に多い)
- 非常勤勤務先からの報酬(委託契約の場合)
いずれも、明細や通帳の入金履歴から把握し、すべて収入として申告する必要があります。
最後に|収入は種類別に“見える化”を
本業以外の活動が増えてきたら、「診療報酬」「講演・原稿」「他院勤務」「会からの報酬」など、収入の種別ごとにExcel等で管理しておくのがおすすめです。
青色申告の活用や、必要経費の取り漏れ防止にもつながります。
👩⚕️ 税務上の判断に迷ったら?
動物病院の税務に詳しい税理士に早めにご相談を。副収入が増えてきた先生ほど、「事業所得にまとめる工夫」や「節税の選択肢」が増えてきます。