薬剤師を雇うときに押さえておきたい!調剤薬局のための税務・インボイス対応

調剤薬局を経営していると、正社員だけでなく、パートやアルバイトの薬剤師さんを雇用する機会が多くあります。さらに最近では、副業で掛け持ちをしている方や、業務委託として働くフリーランスの薬剤師も増えてきました。今回は、雇用形態別に源泉徴収や年末調整の取り扱いについて整理します。
1. 正社員の場合
正社員として雇用している薬剤師には、毎月の給与から源泉徴収(所得税および住民税の特別徴収)を行い、年末調整で年間の税額を精算します。また、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)の加入も義務付けられます。
- 所得税:給与所得の源泉徴収税額表(甲欄)に基づいて計算
- 住民税:6月以降は特別徴収で天引き
- 年末調整:12月の給与支給時に行う
- 社会保険:原則すべて加入(勤務条件により)
2. パート・アルバイトの場合(主たる給与)
パートやアルバイトでも、その薬局がその人の「主たる給与支払者」であれば、正社員と同様に甲欄適用、年末調整も行います。社会保険については、週20時間以上かつ一定の条件を満たす場合には加入義務があります。
- 源泉徴収:甲欄を使用
- 年末調整:他に給与がない場合は実施可
- 社会保険:条件により加入義務あり(週20時間以上・月額賃金等)
3. パート・アルバイト(副業/他に本業あり:乙欄)
副業として薬局でバイトする場合は、基本的に乙欄適用となり、年末調整は行いません。
- 源泉徴収:乙欄の税額表に基づいて計算
- 年末調整:なし(本人が確定申告)
- 注意点:本人が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しない限り、乙欄適用になります
4. 業務委託の場合
薬剤師業務を請け負い契約として行っている場合、給与ではなく報酬として処理します。この場合、原則として薬剤師報酬は源泉徴収の対象外です。
- 区分:”報酬・料金”としての支払
- 源泉徴収:原則不要(※契約内容により例外あり。講演料等は対象)
- 年末調整:対象外
- 支払調書の発行:翌年1月末までに発行
- 社会保険:適用なし(自ら国保・国民年金に加入)
インボイス制度との関係
業務委託の薬剤師がインボイス登録をしているかどうかで、支払う薬局側の処理が変わります。
- 登録済み:報酬に対して消費税を支払い、仕入税額控除が可能
- 未登録:消費税分の控除が不可
- ※給与やパート代にはインボイス制度は関係ありません
まとめ
区分 | 源泉徴収 | 年末調整 | 社会保険 | インボイス制度 |
---|---|---|---|---|
正社員 | 甲欄 | 実施 | 加入義務あり | 無関係 |
パート(主) | 甲欄 | 実施可 | 条件により加入 | 無関係 |
パート(副) | 乙欄で計算 | なし | 原則なし | 無関係 |
業務委託 | 原則不要(契約内容により) | なし | 自己加入 | 登録の有無で処理が変わる |
薬剤師の雇用形態ごとに処理が異なるため、年末に慌てないように、早めに確認・対応しておきましょう。不明点があれば、税理士に相談することをおすすめします。