川端税理士事務所|秋葉原

法人税申告書を自分で作成するのはアリ?税理士が正直にお伝えします

「税理士に頼むと費用がかかるから、法人税の申告は自分でやろうと思うんですが、できますか?」

設立したばかりの会社の社長から、たまにこうした質問を受けます。
最近は「ChatGPTに聞きながらやれば何とかなりそう」という声も聞くようになりました。

結論からいうと、できないことはありません。
しかしおすすめはしません。ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、その理由を正直にお伝えします。

法人税申告書は所得税確定申告の延長ではない

個人の確定申告を自分でやったことがある方は、「法人も同じようにできるだろう」と考えがちです。
しかし法人税申告書は個人の確定申告とはまったくの別物です。

法人税の申告には、決算書のほかに「別表」と呼ばれる書類を作成する必要があります。別表一(税額計算)、別表四(所得金額の計算)、別表五(一)(利益積立金の計算)、別表五(二)(租税公課の処理)など、相互に数字が連動する複数の書類を整合させながら作り上げていきます。

さらに法人事業税・法人住民税の申告書、消費税の申告書も別途必要です。
会計ソフトが自動で作ってくれる決算書とは違い、別表は税務の知識がないと正しく作成できません。

AIに聞けばできるというのは半分正解で半分間違い

最近はChatGPTなどのAIに質問しながら申告書を作ろうとする方も増えています。たしかにAIは質問すれば答えを返してくれます。

しかしここに落とし穴があります。知識がない人が質問すると、そもそも「正しい質問」ができないのです。

たとえば「この保険料は経費になりますか?」と聞けば答えは返ってきます。しかし、そもそも役員報酬の設定に問題があること、使えるはずの繰越欠損金が漏れていること、適用できる優遇税制があることは、その論点の存在自体を知らなければ、AIに聞くこともできません。

AIは聞かれたことには答えますが、聞かれていない重要な論点を漏れなく指摘してくれるわけではありません。
自社の状況を正確に伝えられなければ、返ってくる答えも的外れになります。

つまり「何を質問すべきかがわかる知識」がない状態でAIを使っても、自分の知らない論点はずっと抜けたままです。知識がある人にとってAIは強力な道具ですが、知識がない人が使うと「間違いに気づかないまま自信だけ持ってしまう」という最も危険な状態になります。

「提出できた」と「正しく作れた」は違う

実は、法人税申告書は多少間違っていても提出自体はできてしまいます。
税務署は提出時に内容の正誤をチェックしてくれるわけではないからです。

ここで多くの方が誤解するのが、「提出して何も言われなかったからOK」ではないということです。

税務署は申告書を受け取った時点では中身を精査しません。数年後に税務調査で初めて間違いが発覚するケースが多く、その時点ではもう取り返しがつきません。
そしてその時点で間違いが見つかると過少申告加算税・無申告加算税・延滞税といったペナルティが、本来の税額に上乗せされて数年分まとめて請求されます。「あのとき数万円の顧問料を惜しんだばかりに、数十万円・数百万円の追徴」という事態は実際に起こっています。

私たちが実際に、自分で申告してきた会社の申告書を後から拝見すると、正しく作成できているケースはほとんどありません。
よくあるのは以下のような誤りです。

繰越欠損金の記載漏れにより、本来使えるはずだった過去の赤字を控除できていないケース。
減価償却の計算誤りや償却超過額の調整漏れ。
役員報酬の損金不算入の処理漏れ。
中小企業向けの優遇税制(少額減価償却資産の特例など)の適用漏れ。

なお、間違いには2種類あります。
税金を払いすぎる間違いと、税金が不足する間違いです。
前者は税務署も誰も教えてくれません。
後者は税務調査でペナルティ付きで追徴されます。どちらに転んでも損をするのは会社です。

作成には膨大な時間がかかる

税務の知識がない方が法人税申告書を作成しようとすると、調べながらの作業になるため、数日から1週間以上かかることも珍しくありません。

しかもそれだけ時間をかけても、正しくできている保証はありません。

社長の時間は会社にとって最も貴重な経営資源です。
1週間あれば、営業活動・商品開発・顧客対応など、売上を生む仕事がどれだけできるでしょうか。
申告書作成に費やす時間を本業に使った方が、税理士報酬を上回る利益を生むケースがほとんどです。

それでも自分でやりたい方へ

ここまで読んで「それでも費用をかけたくない」という方もいると思います。その場合は最低限、以下の点に注意してください。

国税庁の「法人税申告書の記載の手引」を熟読すること。申告期限(原則、事業年度終了から2ヶ月以内)を厳守すること。
期限に遅れると青色申告の承認取消リスクや無申告加算税があります。
判断に迷った論点は税務署に電話で確認し、記録を残しておくこと。

ただし税務署は「間違っていないか」を事前にチェックしてくれる場所ではありません。
税務署の回答が違っていたとしても税務署を責めることはできません。
あくまで最終的な責任はすべて自社にあります。

まとめ

法人税申告書の自力作成は不可能ではありませんが、弊社で過去にご自身で法人税申告書を作成していたケースを拝見したところ、正しく作れているケースはいまのところ1件もありませんでした。
特に納税が発生しているケースだとの多くが損をしているという事実もお伝えしておきます。

AIに聞きながら作っても、知識がなければ正しい質問すらできず、重要な論点を見落とします。
そして提出時に何も言われなくても、数年後の税務調査で間違いが発覚した時点では取り返しがつきません。

その時間を本業に使い、申告は専門家に任せる。これが結果的に最も合理的な選択だと私たちは考えています。
「決算だけスポットでお願いしたい」「顧問料がどのくらいか知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。

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