インボイス制度の2割特例とは?
令和5年度税制改正において、令和5年10月1日から導入されるインボイス制度の負担軽減措置として、小規模事業者に係る2割特例の導入が決定されました。今回はこの2割特例についてスポットを当て、どのような事業者が対象になるのか、どういった点に注意すべきなのかを中心に解説していきたいと思います。
◆小規模事業者に係る2割特例の適用対象者
インボイス制度における小規模事業者に係る2割特例の適用対象者とは、次の事業者が対象になります。
小規模事業者に係る2割特例とは、免税事業者がインボイス制度の導入によって課税事業者になった場合に納付税額を課税標準額に対する消費税額の2割とすることができるというものです。
適用となる対象者は、次のとおりです。
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者で、具体的には、
・免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者
・免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者
上記内容に該当した事業者が対象となります。
したがって、インボイス発行事業者の登録を受けていない場合には、2割特例の対象とはなりません。
また、基準期間(個人:前々年、法人:前々事業年度)における課税売上高が1千万円を超える場合、資本金1千万円以上の新設法人である場合、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った場合等、インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合や課税期間を1か月又は3か月に短縮する特例の適用を受ける場合についても、2割特例の対象とはなりません。
◆注意すべき点
小規模事業者に係る2割特例の注意点として、簡易課税制度の選択を検討している人は注意が必要です。
簡易課税制度とは、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者の事務負担を軽減することを目的とした消費税の計算方法の制度であり、売上に係る消費税額から事業区分ごとに定められた一定の割合で計算した金額を仕入に係る消費税額として、売上に係る消費税額から控除して、消費税の納税額を計算することができる制度になります。
2割特例の適用が受けられる場合、簡易課税制度における第1種事業に該当する事業者以外の事業者は、簡易課税制度における消費税の納税額を計算する場合、2割特例で納税額を計算した方が有利となります。
さらに簡易課税制度は、売上に係る消費税額から、事業者ごとの一定割合を乗じた金額を仕入に係る消費税額を計算する為、基本的に中間納税の還付がある場合を除き、消費税の還付が発生することはありません。
よって、第1種事業を営む事業者以外の事業者である場合には、本則課税と2割特例のいずれかを選択すればよいと考えられる為、納付となる場合は本則課税と2割特例のいずれか有利な方法で申告し、設備投資など高額な支払いが発生して還付となる場合には本則課税で申告できるようにしておく事が最善策と考えられます。
したがって、第1種事業を営む事業者以外の事業者は簡易課税制度を選択することはおすすめしません。
また、この2割特例が適用できる対象期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までしか適用できないことに注意が必要です。
上記対象期間を過ぎてしまうと2割特例は適用出来ず、これまでと同様に本則課税か簡易課税により、消費税額を計算します。
◆まとめ
以上が、小規模事業者に係る2割特例の解説となります。
注意すべき点としては上述したように、第1種事業を営む事業者以外の事業者が簡易課税を選択した場合には、かえって不利益を被る可能性がある為、注意が必要となります。
卸売業であれば、2割特例に比べて、従来ある簡易課税制度を利用した方が納付税額を抑える事が出来ます。
その他の業種(製造業やサービス業)は2割特例の方が有利ですが、新規開業の場合には初期投資が高額なケースも考えられる為、2割特例を使わなくても、通常の本則課税で還付申告になる場合もありますので、ご不明な点があれば税理士などの専門家へ相談することをおすすめ致します。