採用した社員の引っ越し費用を会社が負担したら経費になる?給与課税は?税理士が解説
人材不足もあり、地方や遠方から人を採用することも多くなってきました。
そこでよくご質問が、
「新しく採用した社員に引っ越してもらうことになったのですが、引っ越し費用を会社で負担した場合、経費になりますか?給与として課税されますか?」
というものです。
採用担当者や経営者の方からよく聞かれる質問のひとつです。
遠方から採用する場合や転勤を伴う異動の際、引っ越し費用の負担は採用条件のひとつになっていることも多いです。
結論からいうと、会社が引っ越し業者に直接支払う場合、一定の条件を満たせば経費になり、社員への給与課税も不要です。
ただし処理の仕方を間違えると給与として課税されるリスクがあります。
大前提:引っ越し費用の負担は「給与」になる?
会社が従業員のために費用を負担した場合、原則として従業員への「給与」として源泉徴収の対象になります。引っ越し費用も例外ではありません。
ただし、業務上の必要性がある引っ越しであれば、給与課税されないという取り扱いがあります。採用や転勤に伴う転居は業務上の必要性が認められるケースが多く、適切に処理すれば給与課税を避けることができます。
給与課税されないための条件
引っ越し費用が給与課税されないためには、以下の条件を満たす必要があります。
①業務上の必要性がある転居であること
採用に伴う引っ越し、転勤に伴う引っ越しなど、会社の都合や業務上の理由による転居であることが必要です。「本人が自分の都合で引っ越したついでに採用された」といったケースは認められにくいです。
②金額が社会通念上相当な範囲であること
引っ越し費用として常識的な範囲の金額である必要があります。単身の引っ越しで数十万円程度であれば問題ありませんが、過度に高額な場合は給与課税される可能性があります。
③会社が引っ越し業者に直接支払うこと
これが最大のポイントです。会社が引っ越し業者に直接支払う場合は給与課税されません。一方、社員本人に現金で「引っ越し手当」として支給した場合は給与として課税されます。同じ引っ越し費用の負担でも、支払い方法によって課税・非課税が変わります。
具体的な処理方法
会社が引っ越し業者に直接払う場合(給与課税なし)
引っ越し業者からの請求書・領収書を会社が受け取り、会社名義で支払います。勘定科目は「福利厚生費」で処理するのが一般的です。
このケースでは社員への給与課税は不要で、会社の経費として計上できます。
社員本人に現金で支給する場合(給与課税あり)
「引っ越し手当」「赴任手当」として社員本人に現金を支給する場合は、給与として源泉徴収が必要です。社員側では所得として申告が必要になります。
会社としては経費になりますが、社員の手取りが減るため採用条件として提示する際は注意が必要です。「引っ越し費用10万円支給」と伝えていたのに、源泉徴収で手取りが減ってしまいトラブルになるケースがあります。
敷金・礼金・家賃は?
引っ越し費用に関連して、新居の敷金・礼金・家賃を会社が負担するケースもあります。
敷金は会社の資産(預け金)として計上し、退去時に返還されます。礼金は会社の経費(地代家賃または支払手数料)になります。家賃は社宅として処理する場合、役員・従業員から適正な賃料相当額を徴収することが必要です。いずれも会社名義での契約・支払いが前提になります。
なお、従業員の契約した自宅の敷金や礼金、家賃を負担した場合は給与として課税されます。
採用時に注意したいポイント
採用条件の明示
引っ越し費用を会社負担にする場合、雇用契約書や採用条件通知書にその旨を明記しておきましょう。「引っ越し費用実費負担(上限〇〇万円)」などと記載しておくとトラブル防止になります。
短期退職時の返還規定
採用してすぐに退職した場合の引っ越し費用返還については、事前に取り決めておく必要があります。ただし返還を求める場合は労働基準法上の制約があるため、事前に確認が必要です。
上限金額の設定
引っ越し費用に上限を設けていないと、高額な請求が来た場合に対応が困難になります。採用条件として「実費負担・上限〇〇万円」と設定しておくことをおすすめします。
まとめ
採用した社員の引っ越し費用を会社が負担する場合、会社が引っ越し業者に直接支払えば給与課税されず、福利厚生費として経費計上できます。一方、本人に現金で支給すると給与課税が発生するため、処理方法の選択が重要です。
採用に伴う引っ越し費用の処理や採用条件の設計でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
