人件費の事例
人件費は他の経費に比べて支給割合も高く、業種によっては人件費が最も多い経費になることもあり得ます。
人件費の中でも決算賞与と外注費にスポットを当てて解説していきます。
◆決算賞与の経費計上について
決算対策として予想以上に利益が出た場合には、従業員へ決算賞与を支払う事もあります。
この決算賞与は、当期中に支払わなくても当期の経費になるのか疑問に思う方が多い為、決算賞与を経費計上することが出来る条件を以下解説していきます。
決算賞与を当期の経費にするためには、次の条件をすべて満たす必要があります。
①決算賞与を支給する全従業員に対して、決算日までに支給額を個別に通知していること
②通知した支給額を、通知した事業年度において経費計上していること
③決算日後、1ヶ月以内に実際に支給していること
以上の条件を満たしている場合、当期において実際に支払いをしていなくても当期の経費として計上することができます。
しかし、上記3つの条件を満たしていても当期の経費にはならない場合があります。
それは、支給日在籍基準というケースに該当していると経費計上が認められません。
賞与は、「支給日に在籍している従業員に支払う」という支給日在籍基準を、給与規定などに記載している会社があります。
この場合には、当期中の経費として計上することができません。
支給日在籍基準があると、賞与が確定するのは、上記の③に記載されている通り、実際に支給する決算日後、つまり翌期です。
決算賞与の通知日から、支給日までの間に退職した従業員がいた場合には、たとえ未払計上していた場合であっても、その決算賞与が支払われないことになるため、今期中の経費には認められません。
決算賞与は節税のひとつとして、計上される事が多いです。
経費計上するにあたり、上述した3つの条件を満たしていれば、未払いであっても当期において経費として計上出来ます。
ただし、注意すべき点として、支給日在籍基準の場合には、未払計上は認められない為、給与規程などを確認する必要があります。
◆ 外注費を支払った場合
個人と業務委託契約を交わして、外注費を支払う場合の経費について外注費として経費計上が可能か疑問に思う方がおります。
作業内容は従業員と同じである為、給与に該当しないのか悩まれる方が多いようですので、給与と外注費の違いについて以下解説していきます。
従業員とやっていることが同じであったとしても、外注費として経費計上する事に問題はないですが、個人との業務委託契約は、税務調査の際に、外注費ではなく給与であると指摘してくる事があります。
外注費と給与で大きな違いは、消費税になります。
上記いずれかの違いで、消費税の納税額に大きな違いが発生してきます。
消費税の納税額を計算する方法は、原則課税と簡易課税で別れますが、原則課税の場合には下記の通りになります。(簡易課税については説明を割愛させて頂きます)
①売上に対する消費税
②経費に対する消費税
原則課税による消費税の納税額は、①−②の差額が納税額になります。
外注費の場合、消費税が課税される為、上記②の消費税額に含まれます。
しかし給与の場合には、消費税は課税されない為、②の消費税額には含まれません。
そのため、給与をいくら支払っても消費税の納税額は少なくなりません。
よって、消費税の納税額を少なくするためには給与として支払うよりも、外注費として支払ったほうが納税額が少なくなる為、有利になります。
業種によっては、経費のほとんどが人件費の会社もあり、何とかして給与ではなく、外注費にしようとする会社も存在します。
給与か外注費かは、税務調査が入った際には必ずチェックされるポイントになるので、もし外注費が否認されて、給与になってしまったら、ペナルティとして追徴課税が高額になることもあるので注意が必要です。
給与ではなく、外注費にするためには外注先との契約書があることが必須条件となります。
そのうえで、次の5つの要件を満たしている場合には、外注費として経費計上が可能になります。
①外注先が会社の指揮監督を受けていない
②必要な材料や用具は外注先で負担している
③外注先は自分でその業務をやらなくても良い
④引き渡し前の成果物が納品出来なかった場合、外注先は報酬を請求できない
⑤外注先が報酬を計算して請求している
以上の要件を満たしていれば、外注費として計上する事が可能です。
◆結論
今回は人件費をテーマに、決算賞与の取り扱いと外注費を紹介しました。
人件費は金額も大きく、源泉徴収や消費税など税務リスクも高いので、経費計上する上では注意が必要です。