川端税理士事務所|秋葉原

法人の外貨建て取引・為替差損益の税務処理を税理士が解説

「決算書を見たら、為替差益がすごい金額になっていたんですが、これって税金がかかるんですか?」

2026年7月、ドル円は163円台後半まで上昇し、約40年ぶりとなる164円台が視野に入る水準まで円安が進みました。
輸出企業や外貨建てで取引をしている会社にとっては、想定していなかった為替差損益が決算に大きなインパクトを与えるケースが増えています。

外貨建てで売上や仕入、借入を行っている法人では、この為替差損益の処理を誤ると、思わぬ税負担や税務調査での指摘につながることがあります。
今回は、法人の外貨建て取引・為替差損益の税務処理について解説します。

そもそも外貨建取引とは

外貨建取引とは、その対価の額が外国通貨で表示されている取引のことです。代表的なものとして、次のようなものが挙げられます。
外貨建てでの輸出売上・輸入仕入、外貨建ての売掛金・買掛金、外貨預金、外貨建ての借入金・貸付金、外貨建ての有価証券などです。

これらは取引を行った時点の為替レートで円換算して帳簿に記録するのが原則ですが、問題はその後、決算日(期末)を迎えたときの扱いです。

期末に円換算をやり直す必要がある

外貨建ての資産・負債は、決算日にもう一度円換算を行い、取引時の為替レートとの差額を為替差損益として計上する必要があります。
この換算方法には、大きく分けて2種類あります。

一つは期末時換算法で、決算日の為替レートで換算し直す方法です。もう一つは発生時換算法で、取引を行った時点のレートのまま据え置く方法です。

どちらを選ぶかは、外貨建ての資産・負債の種類ごと、通貨の種類ごとに選定できますが、届出をしない場合は法定の換算方法が適用されます。法定の換算方法は、外貨預金や短期の外貨建て債権・債務(決算日の翌日から1年以内に決済期限が到来するもの)については期末時換算法、長期の外貨建て債権・債務については発生時換算法とされています。

つまり、多くの会社が保有している外貨預金や、通常の売掛金・買掛金は、何も届出をしていなければ自動的に期末時換算法が適用され、決算日のレートで洗い替えを行うことになります。急激な円安が進んだ今期は、この期末換算だけで多額の為替差益(または差損)が発生している会社も少なくないはずです。

換算方法を変更したい場合は、その取引を行った事業年度の確定申告書の提出期限までに、税務署へ届出書を提出する必要があります。決算が近づいてから慌てて検討するのではなく、期中の早い段階で為替リスクの影響を確認しておくことをおすすめします。

為替差損益は未実現でも課税対象になる

ここで誤解が多いのが、「実際に決済していない(円に換えていない)のだから、課税されないのでは」という点です。

法人税では、期末時換算法を適用する資産・負債について、たとえ決済が済んでいない含み益・含み損であっても、期末の評価替えによる為替差損益をその事業年度の益金または損金に算入します。

つまり、外貨預金を保有しているだけで解約していなくても、期末のレートで評価した差益には法人税が課税されるということです。

個人の外貨預金であれば解約(為替差益の実現)まで課税されないケースが一般的ですが、法人の場合はこの点が大きく異なりますので、注意が必要です。

消費税の換算にも要注意

外貨建て取引は、消費税の計算でも円換算が必要です。

課税資産の譲渡等の対価の額は、原則として取引時の対顧客直物電信売相場(TTS)または電信買相場(TTB)など、継続して使用しているレートで円換算します。

法人税の期末換算と消費税の取引時換算は別のルールで動いているため、決算時にまとめて整理しようとすると混乱しやすいポイントです。
輸出入取引が多い会社は、取引が発生した都度、どのレートを使うかを社内で統一しておくと、決算作業がスムーズになります。

為替予約を利用している場合

為替変動リスクをヘッジするために為替予約を利用している会社もあります。
為替予約が一定の要件を満たす場合には、予約レートで外貨建取引を換算する振当処理が認められています。

ただし、要件を満たさないと通常の為替差損益とは別に、為替予約自体の時価評価が必要になることもあるため、為替予約を利用している場合は個別に確認が必要です。

まとめ

約40年ぶりの円安水準が続く中、外貨建てで取引をしている法人にとって、為替差損益は決算の損益を大きく左右する要素になっています。

特に次の点は決算前に必ず確認しておきたいポイントです。

外貨建ての資産・負債について換算方法の届出をしているか、
期末時換算法が適用される外貨預金・短期債権債務の含み損益を把握できているか、
消費税の換算レートが取引ごとに統一されているか、
為替予約を利用している場合の振当処理要件を満たしているか。

急激な為替変動があった期は、想定外の益金・損金が発生し、納税資金の準備にも影響します。

外貨建て取引が多い会社は、決算を迎える前に一度、顧問税理士に為替差損益の見込みを確認しておくことをおすすめします。

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